2017(H29)年9月9日(土)〜9月17日(日)
11時00分〜18時00分
会期中無休
作家在廊日 9月9日(土)&10日(日)
「飾り」は時として表層を装うだけで、造形の本質ではないとされる場合があります。しかし古来より世界の民族造形は「飾り」の歴史と言っていい程、様々な文様を生み出してきました。それは神に近づくための祝詞として、また時の権力を表す力の象徴として。原始美術の自然な発生、それは工芸に限らず、自らの体を刺青で飾る古代人の意識を推察するなら、生物が子孫を繋ぐ求愛のための飾りや、敵から身を守るための擬態とも通じる、より根源的な遺伝子レベルの発露であり、本来生きるための必然ではないかと思うことさえあります。
山梨県南アルプス市で漆の作品に取り組む横内みえさん。大学時代より漆に触れ、自然素材の持つ生命力に魅せられてきました。漆器のように定型化された漆の価値、例えば堅牢で美しく高級品である、といった側面の「漆」よりも、樹液の漆が硬化し、色を変えていく様に、生命の神秘を感じると言います。学生時代より、漆本来の魅力をどう形にして伝えるかを考え続け、今は土型に漆そのものを塗り重ねていく脱乾漆という技法による作品を主にしています。
そんな横内さんに今展では「飾り」をテーマに作品づくりに臨んで頂きました。漆の飾りと言えば、蒔絵、沈金、螺鈿など伝統的な加飾技法がありますが、今回はもっと根源的な「飾り」に着目しています。例えば縄文時代に作られた装身具。単に身を飾るアクセサリーではなく、当時は命を失わないように魂を引きとめるため、また邪悪なものを退ける呪具でもあり、「心身のお守り」として意味をもっていた頃の「飾り」の本質に着目することで、「漆」の役割を捉え直そうとする試みなのです。
今展では縄文の装身具から着想した土版や糸玉の飾る作品をはじめ、従来から取り組んでいる脱乾漆のアートピース、そして猪口やカトラリーなどの実用の器も並びます。横内さんとお話していて感じるのは、こちらの投げかける言葉を噛み締めながら、深い深い世界に降りて行き本質を見つめようとする姿勢です。今回の「飾り」でどうご自身のイメージする漆の本質に近づけたのか、この目で確かめてみたいと思います。どうぞ皆様にもご高覧頂きたくご来店をお待ちしております。
店主
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ギャラリーうつわノート
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